最新記事

米中関係

トランプ、香港の優遇措置撤廃を指示 中国の国家安全法制定めぐり

2020年5月30日(土)10時43分

トランプ米大統領は29日、香港に対する優遇措置を撤廃するよう政権に指示したと明らかにした。香港の統制強化に向けた中国政府の「国家安全法」制定計画に対抗する。28日撮影(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ米大統領は29日、香港に対する優遇措置を撤廃するよう政権に指示したと明らかにした。香港の統制強化に向けた中国政府の「国家安全法」制定計画に対抗する。

トランプ大統領はホワイトハウスで行った記者会見で、中国が香港の高度な自治に関する約束を破ったとし、香港国家安全法制定は香港や中国、世界にとって悲劇だと批判。「香港に対する優遇策を撤廃する措置を取る」とし、香港の自治の阻害に関与していると見なす人物に対し制裁措置を導入すると表明した。

米政府の対応は犯罪人引き渡しから輸出規制にわたる「香港を巡る広範な合意」が対象で、「例外はほとんどない」と指摘。「米国の措置は力強く、意味があるものとなる」と語った。

ただ、こうした措置を実施する期限は示さなかった。香港で操業している米企業は厳しい措置に反対を示しているため、時間を稼ごうとしている可能性がある。

トランプ大統領このほか、この日のうちに声明を発表し、大学研究の保全に向け、リスクがあると見なす人物について中国から米国への入国を停止することも明らかにした。

これに関連して、米政府が中国人留学生の学生ビザ(査証)取り消しを計画していることが、関係筋の話でこれまでに明らかになっている。米国の大学院で学ぶ中国人3000─5000人に影響が及ぶ可能性があるという。

トランプ氏はまた、米国民が中国企業に投資するリスクを回避するための方法を検証すると表明。「投資会社は、共有する規則の下で運営されていない中国企業に投資する不当な隠れたリスクに顧客をさらしてはならない」とし、政権内の金融市場に関する作業部会に「米国の投資家保護を目的に、米株式市場に上場する中国企業のそれぞれの慣習」を検証するよう指示したと明らかにした。

作業部会にはムニューシン財務長官、連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長、米証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長らが参加する。

トランプ大統領は厳しい姿勢を示しながらも、中国との対立が一段と精鋭化すれば、難航した協議の末にようやく得られた第1段階の通商合意が覆されると認識しているとみられる。香港には約1300社の米企業がオフィスを構え、約10万人を雇用。大統領はこうしたことにも配慮しているとみられる。

中国全国人民代表大会(全人代)は28日、香港国家安全法の制定方針を圧倒的賛成多数で採択。ポンペオ国務長官は、香港に対し米国内法に基づく優遇措置を認められないと議会に報告したことを明らかにしていた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20200602issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表

ビジネス

9月PCE価格、前年比2.8%上昇・前月比0.3%

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談へ W杯
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中